令和5年度宅建試験のちょっとややこしい問題を宅建士が解いてみた

こんにちは。宅建士のRenです。

いつもは不動産の豆知識や不動産投資についての記事を書いています。

その中で不動産投資家の方が宅建士に挑戦する際の話などを書いていますので、今回は趣向を変えて令和5年度の宅建試験について書いていこうと思います。

といっても、宅建合格のためのブログとかってものでもないので、ちょっとややこしいかなと思ったものを取り上げていきます。

解説といったような立派な文は書けませんが、宅建の試験勉強を頑張った経験から、解き方などが参考になると嬉しいです。

問4相殺

まずは問題文を引用しますね。

【問  4 】 AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び判例によれば、次のアからエまでの記述のうち、Aが一方的な意思表示により甲債権と乙債権とを対当額にて相殺できないものを全て掲げたものは、次の 1 から 4 のうちどれか。なお、いずれの債権も相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示はされていないものとする。
ア 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨
の意思表示をした乙債権
イ 弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権
ウ 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
エ 弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
1  ア、イ、ウ
2  イ、ウ
3  ウ、エ
4  エ

令和5年度宅地建物取引士資格試験より引用

これは相殺適状についての問題ですよね。

債権と弁済期、相殺について基本的なことを知っていないと解けない問題かなと思います。

そのうえ、問題文が長いため長文を読むのが苦手な方は解くのに時間がかかるかなという印象です。

こういう時なんですが、空きスペースに図を描きながら解くと非常に簡単にできて勘違いも防止できます。

簡単に言うと相殺適状は、「相殺できるかどうか」の条件のことですよね。

さらに問題となっているア~エを見ると「弁済期が到来」や「弁済期の定めがない」という文言が見られます。

つまり、相殺適状の中でも「双方の債権が弁済期にあること」に注目しなければならないことがわかります。

先ほど、空きスペースに図をと書きましたが、この場合私が解いてみた時に書いた図をのせますね。

iPadのメモアプリに書いたものなので、字がへたくそなのは申し訳ないです(笑)

この問題の場合、「Aの一方的な意思表示」という部分から、甲の弁済期が到来しているかどうかが焦点となります。

乙の弁済期は到来してなかろうが、Aが期限の利益を放棄すればよいだけですからね。

逆に、甲の弁済期については、到来もしていないのに返せと言えないのと同じことです。

例えば、1年後に100万円を返済してくださいという内容だった場合、まだ1年経っていないうちに返せとは言えないですよね。

問題の中でややこしいのは「期限の定めがない」というところでしょうか。

期限の定めがないというと、期間がないようですので、「返せ」と言えないように試験中には思えるかもしれません。

でも、ふと現実に置き換えてみてください。

友人間でちょっとした貸し借りがあった場合、期限を決めてないなんてことはよくありますよね。

でもそれを、期限を決めていないからといっていつまでも返さなくてよいということになるでしょうか?

ならないですよね。

ではどうなるのか?

期限の定めをしていないときは、「返せ」と言われたときに返さないといけません。

つまり、いつでも返せと言えるわけですから、期限の定めのない債権は弁済期がすでに到来しているのです。

これらの点をア~エに当てはめてみましょう。

ア:甲債権に期限の定めがないということは、すでに弁済期が到来しています。乙債権はAが期限の利益を放棄すればよいわけですから、これは相殺できますよね。

イ:甲債権の弁済期が到来していて、乙債権も到来しているため相殺できます。

ウ:これもアと同様ですね。

エ:甲債権の弁済期が到来していないのでAからの一方的な相殺はできません。

つまり答えは、「エのみ相殺できない」ということになります。

問題文のように小難しく書いてあると難しく考えがちですが、とどのつまり、返す約束の日がまだ来てないんだから「返せ」とは言えないよねってことです。

「返せ」という権利が発生しているとき、こちらも相手に返さなきゃいけないものがあるから相殺できるわけです。

問9 賃貸借契約

難しい問題ではありませんが、当ブログが不動産投資を主なテーマにしていますので、賃貸借における修繕が問題になっている問9を取り上げます。

【問  9 】 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が令和 5年7月1 日に締結された場合の甲建物の修繕に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1  甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
2  甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。
3  Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。
4  甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

令和5年度宅地建物取引士資格試験より引用

賃貸借契約における修繕についてですね。

不動産投資で特にオーナーになって賃料で利益を得ようと考える人は、建物や部屋の修繕はかなりの頻度で対応していくことになります。

私の投資スタイルも賃料による利益ですので、管理を任せている不動産屋から頻繁に連絡がきます。

この問いの答えは「2」ですよね。

建物に修繕の必要がある場合、貸主であるAは確かに修繕をしなければなりません。

が、「直ちに」やらなければならないかというとそうでもなくて、借主であるBさんが修繕できるのは「Aさんが相当な期間内に」修繕しない場合になります。

では相当な期間とはどのくらいのことを言うのか、ということですが…

これはケースによりまちまちといった感じです。

実情をお話ししますと、スピード感をもって対応していかないとクレームや面倒なことになりかねませんので、私は直ちに対応しています。

対応フローとしては、私の場合ですが…

①不動産屋から連絡を受ける

②対応できる業者さんに連絡(これは設備屋さん、これは電気屋さん、という風に普段から懇意にしているところ)

③知り合いの業者さんで対応できないときや急ぎの時は管理を任せている不動産屋さんに業者の手配を依頼する

このような感じです。

軽微で修繕費も安そうな時は、対応が面倒なので不動産屋さんにお任せすることが多いです(笑)

その分、高くつきますが、業者との連絡のやりとりなどがなくなるだけ良いですね。

問10抵当権

これもちょっとわかりづらい問題ですよね。

抵当権の順位譲渡と順位放棄を理解しているかどうかになります。

債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額 1,000 万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額 1,200 万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額 2,000 万円)をそれぞれ有しているが、BがDの利益のため、Aの承諾を得て抵当権の順位を放棄した。甲土地の競売に基づく売却代金が 2,400 万円であった場合、Bの受ける配当額として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1  0 円
2  200 万円
3  400 万円
4  800 万円

令和5年度宅地建物取引士資格試験より引用

これ、勉強もしていなければ「放棄」なんて書かれると、Bは放棄したためCとDが繰り上がってC1,200万、D1,200万、B0円と考えて答えは①!という風になりかねません。

知っているかどうかにはなりますかね…

この問題の場合、まず放棄も何もない順当な場合で計算します。

すると、B:1,000万、C:1,200万、D:200万

となりますよね。

ここで、BがDのために放棄するということです。

本問の場合、順位放棄ということになるので、BさんとDさんの受けるはずの配当額を合計し、債権額の割合で按分します。

BさんとDさんの合計額は1,200万円

債権額はB:1,000万、D:2,000万

よって、Bさんに1/3とDさんに2/3となります。

つまりBさんが受ける配当額は400万円、Dさんは800万円となるわけです。

答えは③ですね。

ちなみに、順位譲渡となると話は変わります。

この場合も受けるはずの配当額の合計を出すところ(2人合わせて1,200万円)までは同じなのですが、譲渡になるとDさんが優先になって、Dさんの債権額が2,000万円ですので、Dさん:1,200万、Bさん0円ということになります。

続きはまた今度…?

すみません、見切り発車でコラム的に書いてきましたが、めっちゃ長くなりますね(笑)

とりあえずきりが良い10問目まで終わりましたので、今日はここまでにしておこうと思います。

続きも書こうかなとは思っています。

また、ここで触れなかった問題でリクエストがあれば記事で取り上げようと思いますので、ぜひコメントください。

それでは今日はこの辺で。